しかし現在では、青少年はもちろん団塊の世代でさえ、日常的に筆や硯に親しんでいる人はごく僅かになってしまいました。
ところで、日本で作られる「和硯」の代表格「赤間硯」が山口県宇部市で生産されていることは、多くの方がご存じだと思います。
日本の硯の原石産地としては、山口県宇部市の赤間石のほか、宮城県石巻市の雄勝石、三重県熊野市の那智黒石、山梨県雨畑の玄晶石等が代表的なものです。なかでも、赤間石との雄勝石の二つは百年以上の歴史があり、国の「伝統的工芸品」として指定を受けているものです。
経済産業大臣指定の「伝統的工芸品」とは、
①おもにふだんの生活で使われ ②工程のおもな部分が手作り
③伝統的技 術又は技法により ④伝統的に使われてきた原材料
⑤一つの地域で産業として成り立っている
という厳格な要件に合致することが必要で、山口県内では、赤間硯のほか、萩焼、大内塗りの3品目のみで、全国では211品目が指定されているようです。
そんな貴重な赤間硯の生産地「赤間硯の里」を訪ね、若き作硯家「日枝陽一」氏に会って色々お話を聞いてきました。
赤間硯の里は、宇部市大字西万倉(旧楠町)の岩滝というのどかな農山村地区にあります。
約50年前、この地区では30戸の民家があり、うち28戸が赤間硯の生産に携わっていたそうです。現在では民家そのものも減っていますが、赤間硯作りに携わる家はわずか4戸のみで、いずれの家も作硯家の高齢化と後継者不足の現況で、日枝陽一氏のみが県内唯一の後継者というわけです。
日枝陽一氏は、日枝玉峯堂において父である玉峯氏の第三代後継者として育ち、平成5年に東亜大学デザイン学科に入学されました。以後、数々の赤間硯製作に取り組み、主要な工芸展でことごとく入賞を重ねたほか、平成21年には文化庁長官賞(大賞)を、また平成22年には経済産業大臣より伝統工芸品産業奨励賞を受賞されるなど、まさに将来を嘱望された日本工芸会正会員・学術博士・作硯家なのです。
私が訪ねた時、ご本人とお母様のお二人が作業中でしたが、手を休めて赤間硯が出来るまでの工程や歴史などについて詳しく説明していただきました。
赤間硯として世に出るまでには、石採り・選別、形作り、縁たて、加飾彫り・荒彫り・仕上げ彫り、仕上げ磨き、うるしぬり等の長い工程がありますが、ほとんどが手作業という難作業ばかりです。だからこそ、出来上がった作品一つ一つに作家の魂が込められており、書道家にとっては生涯の用具として非常に愛着が沸くものだと思います。
私自身、書道家ではありませんが日常的に書をたしなみ、四~五十年前に入手した赤間硯を今でも愛用しております。この度、日枝陽一氏に出逢い、硯の手入れ方法等いろいろ教えて頂いたことで、なおさら赤間硯のファンになりました。
若き作硯家・日枝陽一氏の益々のご活躍を祈念致しますと共に、少しでも多くの方に赤間硯を知っていただき、書に親しんでほしいと願っています。
赤間硯の里
所在地 宇部市西万倉岩滝793番地
電 話 山口県赤間硯生産協同組合
(代表理事:日枝敏夫) 0836-67-0641
宇部観光コンベンション協会
http://www.ube-kankou.or.jp/sightseeing/detail.php?id=57 参照
レンタカーのご用命は山口県レンタカー協会加盟店へ
http://www.yama-rentcar-kyokai.jp/
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